おかげさまで五周年記念祭も無事終了いたしました。

先月は雑誌掲載もあり忙しくさせていただきましたので

遅くなりましたが改めて弊店のこの五年間の歩みを総括いたします。

 


 

17年前東京で、やりたいこともやれることも無く

毎日を怠惰に無為に過ごしていた頃に

当時雑誌に連載されていた漫画に感化されて

「京都に行ってバーテンダーでもやってみようか」

と軽薄に考えたのが始まりでした。

 

その漫画は上掲の“酒場ミモザ”です。

かつて三条木屋町下るにあったリラ亭さんがモデルです。

加藤登紀子さんが“時代おくれの酒場”と唄った名店でした。

 

縁も無い京都に鞄一つを持って来て

一乗寺の山際に三畳一間で月一万五千円の部屋を借り

翌日にはバーテンダーのアルバイトの口を見つけました。

結局その店には12年お世話になりました。

 

カジュアルなバーでしたから

毎日軽口を叩くのが仕事みたいなもので

性に合って楽しく働かせていただきました。

 


 

夏は鴨川に納涼床が出て忙しく

休みなく働きました。

家賃も安く、使う間もなかったので

給料で古酒を買いこむようになりました。

 

冬は暇でいくらでも休めましたので

長期で海外に行くようになりました。

“酒場ミモザ”の主人公にならって

インド最南端のコモリン岬までハイボールを飲みに行きました。

 

初めは物価の安いアジアやインドでしたが

そのうちヨーロッパやカリブに酒造りを見に行くようになりました。

 

アルバイトの仕事が生涯の職となりました。

 


ジョルジオ・ダンブロージョ氏のコレクション・ルーム  ミラノにて

 

 

長く勤めると管理職になり、それは私には不向きでした。

再び現場に立つべく

独立を決めました。

 

私はラムとウイスキーが特別好きですから

それらを中心とした店をしようと考えました。

幸いボトルはもう部屋に数百本ありました。

 

店の名前を考えているときに

ふとまた数年ぶりに“酒場ミモザ”のページを開きました。

 



 

 

What is the life without love and whisky.

愛と酒なくして 何の人生ぞ

 

この文言を勝手に拝借して、もじって店名にいたしました。

結果、当初予定していなかったラムとウイスキーだけの専門店になりました。

 

開店初日に最初にお迎えしたお客様は

最も尊敬する偉大な先達、二条KのN氏でした。

こんなに嬉しいことはありません。

その日最後のお客様は

寺町の林檎のT氏と御幸町の揺り椅子のT氏のお二人組でした。

光栄の至りです。

 

それから五年間が過ぎ

N氏のようなホスピタリティや、ミモザのマスターのような包容力は持てませんでしたが

洋酒の魅力をできるだけ純粋に愉しんでいただけますよう

尽力しております。

 

五周年を超えて

今後の目標は

“より純粋に”

 

洋酒の魅力を皆様にお伝えすることを生業に選んだのですから

話術や、人脈や、しつらえの力を借りず

その技術と知識、洋酒への理解をより向上させることで

皆様にご満足いただける高みを目指したいと存じます。

 

偏狭な考えで

それはバーテンダーの仕事ではないと言われれば

そうかもしれません。

 

あと3、40年も続けて、

見るべきほどのことは見つ

という心境になったら

心から

酒の銘柄なんてなんでもいいんですよ。

と言う日が来るかもしれません。

 

それまではどうかお付き合い下さいませ。

 

 

 

 


 

 

今週売り切れたのはダンカンテイラーのボウモア1968と90年代のスプリングバンク15年です。

どちらも華やかな香り高い美酒でした。

ボウモアはハートブラザーズの68とプレストンフィールドの72が開いています。

スプリングバンクは新たにQE2の12年ジャグを開封いたしました。

蒸留は60年代かと思われます。おすすめです。

 

 

 



 

先の休日は御苑にある京都迎賓館に行って参りました。

年に一度、予約申し込みをして抽選制で参観できます。

金属探知や手荷物の開示もあり、さすがに厳重な警備です。

 

現代の和の意匠の粋で眼福でした。

写真は中庭の池に用意された和舟です。

ブータン国王夫妻も舟遊びを楽しまれたそうです。

 

 

 

 

 

Rum and Whisky   (ラム・アンド・ウイスキー)

604-8014 京都市中京区木屋町三条下る材木町188-3 光ビル4階東 (木屋町交番から北に7軒目)

20時から翌4時 火曜休  チャージ500円

3時以降でノーゲストの場合は閉店させていただくことがございます

小さな店でございますので僭越ながら御一組3名様までにてお承りさせていただきます